お刺身に、感謝。
けして腐ってはいけない。
今日何が食べたいか?と考えたとき漠然と魚が食べたい、と思うことがある。
7時を過ぎたスーパーでには、鮮魚売り場を見ても魚たちは少ない。
右を見ても左を見ても、食材として死にかけた魚類や貝類が売られているのだが、ひと際目を引くのがタコの刺身だった。その日のタココーナーは歯抜けの鮮魚売り場の中で幅を利かせていた。そう、それこそ幅を取っていたのある。
半額になっていたのが一つあったので「今日はタコでも食べようか?」なんて相方に聞いてみたが、相方の顔は渋柿を食べたように渋い顔。
タコの刺身は、まもなくほかのタコの刺身パックの上に戻された。
タコの刺身には腐らず頑張って売れてほしい。しかし時間は残酷な事実を伝える。
このタコはおそらくもうすぐ腐ってしまうのだ。
マグロやカツオの刺身が売れていく中で、タコが残ってしまう現実。
ここは一昔前海の悪魔としてタコが恐れられていた時代の西洋なのか。
かくいうオイラも、本マグロの入った刺身のパックの方を買おうとしたのだが、結局半額になっても高いものだ。
値段をもう一度見て、うまいダンサーのロボットダンスように伸びた手がピタリと止まる。
給料日がやってきた時しか買ってあげられないが、腐りかけたその姿になったときにはシロガネーゼやヒルズ族に見初められて欲しい。
半額で買える可能性が残っている刺身たちに、感謝。